自社を守るために知っておくべきネット誹謗中傷の対処法

インターネット上の誹謗中傷は、企業の信用や顧客との信頼関係を一瞬で揺るがす深刻なリスクです。事実と異なる情報や悪意ある書き込みが拡散されることで、売上の減少や採用活動への影響など、経営に直接的な打撃を受ける可能性もあります。本記事では、自社を守るために知っておきたいネット誹謗中傷への適切な対処法を、実践的な視点から解説します。

誹謗中傷を受けたときに企業がまず確認すべきこと

ネット上で自社に関する誹謗中傷を見つけたとき、感情的に反応する前に、まず冷静に状況を整理することが極めて重要です。最初にやるべきは「その投稿がどこで、誰によって、どのように拡散されているのか」を正確に把握することです。投稿先のURL、投稿日、内容、拡散状況を記録し、スクリーンショットなどの証拠を保全します。

次に、その投稿が事実に基づいているのか、虚偽や誇張が含まれているのかを社内で確認しましょう。事実と異なる場合は「名誉毀損」「業務妨害」「信用毀損」に該当する可能性があり、後の対応方針が変わってきます。逆に、実際にトラブルがあった場合でも、その表現が社会的評価を過度に貶める内容であれば、違法性が認められる可能性もあります。

さらに、その投稿がどの程度の影響力を持っているかも見極める必要があります。フォロワー数の多いインフルエンサーによる投稿なのか、匿名掲示板での小規模な話題なのかによって、企業が受ける風評リスクの度合いが変わってきます。

状況の整理ができた段階で、削除申請や法的措置の検討に移ることが適切です。いずれにしても、証拠の保全と冷静な初期対応こそが、被害を最小限にとどめる第一歩となります。

拡散を最小限に抑えるための初動対応と社内体制

ネット上の誹謗中傷が発覚した際、初動対応のスピードと社内の連携体制が、今後の被害拡大を防ぐうえでの鍵を握ります。特に中小企業の場合、広報や法務の専任部門がないケースも多く、現場の混乱や対応の遅れによって問題が拡散してしまうことが珍しくありません。

まず社内では、誹謗中傷への対応を統括する責任者(社長や役員、広報担当など)を速やかに設定し、現状の共有と初動方針の確認を行います。関係者がバラバラに対応してしまうと、かえって事態が混乱し、誤情報の発信や社外とのトラブルを引き起こすこともあります。

次に、社内外への「発信ルール」を決めることが大切です。SNS等での個別返信を控えるのか、公式見解としてアナウンスするのか、どのタイミングで謝罪や説明を出すのかなど、方針を定めておけば、拡散への過剰反応や社員の暴走を防ぐことができます。

加えて、風評リスクに対応するためのマニュアルを事前に作成しておくと、緊急時でも落ち着いた判断が可能になります。対応フロー、削除申請の手順、外部専門家への相談ラインなどを明記しておけば、対応スピードも向上し、被害の拡大を食い止めやすくなります。

初動対応は“何を言うか”よりも、“どう判断し、どう動いたか”が企業の信用を左右します。社内で一貫性のある対応をとることが、信頼を守るための大きなポイントとなるのです。

削除依頼・法的措置・逆SEOなど有効な対処手段の種類

誹謗中傷に対する具体的な対処方法は、大きく分けて3つあります。「削除依頼」「法的措置」「逆SEOや情報発信」です。状況に応じて、これらを単独または組み合わせて実施していくことが効果的です。

まず、削除依頼は最も基本的な対応です。SNSや掲示板、レビューサイトなどでは、それぞれのガイドラインに沿って削除申請が可能です。たとえば、Googleマップの口コミやX(旧Twitter)の投稿などには、「不適切な投稿を報告する」機能が用意されています。必要に応じて、URL・スクショ・被害状況などを添えて申請します。

削除が認められない、あるいは悪質なケースでは、法的措置が選択肢に入ります。投稿者が明らかに虚偽の情報を流している、名誉を毀損している、業務妨害をしているなどの場合は、弁護士を通じて発信者情報開示請求や損害賠償請求を行うことが可能です。投稿の悪質度が高いほど、法的対応の必要性も高まります。

また、削除や法的対応だけでは不十分な場合には、逆SEO(検索結果の押し下げ)を活用するのも有効です。自社の公式サイトやプレスリリース、ポジティブなコンテンツを意図的に上位に表示させ、ネガティブ情報を検索結果の下層へと押し下げていく施策です。継続的な情報発信により、企業の信頼を可視化する効果もあります。

どの手段を取るにしても、重要なのは「感情的に動かず、冷静かつ法的根拠をもって対処すること」です。必要であれば専門家の協力も得ながら、計画的に対応していくことが求められます。

風評に強い企業をつくるために日頃からできる備え

誹謗中傷に巻き込まれないための最大の対策は、日頃からの備えにあります。どれだけ素早く対応できても、常に“後手”に回っていては信頼は守れません。だからこそ、“風評に強い企業体質”を日頃から育てておくことが、最大の防御策となるのです。

まず基本となるのが、ポジティブな情報発信の習慣化です。公式サイトやSNSで、自社の理念、活動、顧客の声などを積極的に発信しておくことで、検索結果に良質な情報が蓄積されます。これにより、万一ネガティブな投稿があっても“対抗できる土壌”ができあがります。

また、社内教育の徹底も不可欠です。すべての社員が「SNSでの一言が企業に影響する」という意識を持ち、外部発信における言葉選びやリスク感覚を磨いておくことで、無用なトラブルを防ぐことができます。特に、カスタマー対応や採用担当など“外部との接点が多い部門”には、定期的な研修が有効です。

さらに、リスクを早期に察知するモニタリング体制も構築しておきたいポイントです。GoogleアラートやSNS分析ツールを使えば、自社名に関連する言及があった際に自動で通知され、初期段階での対応が可能になります。

「風評が起きる前提で備えておく」ことが、これからの企業にとっては当たり前の経営感覚になります。信頼は“何かあったときに守る”ものではなく、“普段から積み上げておく”べき資産なのです。

まとめ

ネットの誹謗中傷は、いつ誰に降りかかってもおかしくない時代です。だからこそ、自社を守るには、冷静な初動対応、正確な情報整理、削除・法的措置・発信の三本柱による計画的な対処が不可欠です。同時に、日頃からのポジティブな情報発信や社内教育によって、“風評に強い企業”をつくっていくことが、信頼を守る最大の戦略となります。起きてから慌てるのではなく、起きる前に備える。それが、ネット時代に企業が生き残るための基本姿勢です。

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